熊本県などでの一連の地震で5人が死亡した熊本県西原村では、地元の消防団がいち早く救助活動に当たり、大切畑(おおぎりはた)地区では7人の命を救った。それだけでなく、炊き出しや交通整理、防犯まで担い、災害現場で住民に頼りにされている。

 西原村は、県中部の山間部の農村で、人口約7千人。布田川(ふたがわ)断層北東部付近にあり、村内の住宅約2300棟のうち344棟が全壊、1087棟が半壊(いずれも村調べ)した。村内にある熊本市消防局の出張所(6人)や熊本県警大津署の駐在所(1人)だけでは、手が足りなかった。

 力を発揮したのが、定員いっぱい約250人が所属する消防団だ。2分団の副分団長、田中憲聖(けんせい)さん(41)によると、16日未明の「本震」で、約25世帯のほとんどが全壊状態となった大切畑地区では、直後から9人の消防団員が救助活動に当たった。

 「おばちゃーん、おばちゃーん」

 田中さんらの呼びかけに「ここよ」と声が返ってきた。田中さんらはジャッキではりを持ち上げ、40センチほどの隙間に潜り込み、生き埋めの住人の腕や足首をつかんで助け出した。消防団のOBも加わり、約2時間かけて、7人を倒壊家屋の下から救い出した。「潰れた家を見て正直、もう死んどらす(死んでらっしゃる)と思ったけど、奇跡的に全員助けられた。良かった」と田中さんは話す。

 団員の多くの自宅も損壊した。田中さんの家も15度ほど傾き全壊状態。家族4人を村内の親戚宅などに避難させ、自らは車中や避難所に泊まりながら、精力的に活動を続ける。手分けして一軒一軒を回り、火災が起きないようプロパンガスのボンベのバルブを閉めたり、電気のブレーカーを落としたりした。

 村役場から、連絡がとれない住民の情報を受ける度に、団員が確認に出向いた。けが人がいれば止血などの応急手当てもした。村では16日には全員の安否確認を終えた。

 巡回して道路の陥没箇所を探し出し、警察に代わって通る車に注意を促す。大切畑ダムの水門が壊れた際には、現地の確認もした。18日には、倒壊家屋を物色する不審者の目撃情報があったため、防犯のための見回りも始めた。

 避難所で食料が足りないと、農家から食材をもらって届けることもある。不足する物資などの情報の収集、伝達もしている。

 救助された60代の女性は「死ぬかと思っていた。助けてもらったときは本当にうれしかった」と話した。村の駐在所長、宇佐川照孝警部補も「阪神大震災の応援に行った経験があるが、このように大きな地震だと、1人では交通整理も巡回もできない。消防団は心強い存在」と話す。

 団長の馬場秀昭さん(60)は「地元を熟知していることと、機動力があって小回りが利くのが強み」と話す。(神崎卓征)